再生可能エネルギーとして太陽電池は,工業用や家庭用での身近な発電デバイスとして期待されています.太陽電池に入射する太陽光を効率的に利用するための光マネジメント技術は非常に重要な技術です.本研究では,ナノインプリントによってガラス表面に作製した凹凸形状のテクスチャ基板を,非常に材料・製造コストが安い色素増感太陽電池(DSSC: Dye Sensitized Solar Cell)に応用することで,色素増感太陽電池の性能向上と製造コストの削減を目指した研究を行っています.
薄膜系太陽電池と光マネジメント(ライトトラッピング)
太陽電池の変換効率の向上には,発電層の改良が中心ですが,それに加えて太陽から入射する光を効率よく光吸収層に吸収させる技術である光マネジメント技術も重要な技術です.
下図は,薄膜系太陽電池の模式図です.光マネジメント技術として①反射防止技術:AR(Anti-reflection),②ライトトラッピングがあります.特に薄膜系太陽電池では,ライトトラッピングが重要となります.
薄膜系太陽電池の光吸収層の膜厚は数μmと薄く,光を十分に吸収できません.膜厚を厚くすれば光の吸収は増加しますが,変換効率(取り出せる電流)は膜厚に比例しないため,発電コストに見合いません.
そこで,ガラスやTCO表面に凹凸のテクスチャ形状を作製したテクスチャ基板を導入することにより,入射光を散乱(回折)させ,光吸収層内の光路長を増加させるで変換効率を上げることができます.
テクスチャ基板
下図は,本研究グループで提案しているテクスチャ基板を用いたDSSCの概念図です.ナノインプリントによって作製したガラス表面にSiO2製テクスチャ基板を導入しています.このテクスチャ基板によって下記の3つの効果が期待されます.
①反射防止効果(glass-TCO間)⇒入射光の増加
②光散乱効果⇒光路長の増加
③表面積の増加⇒対面積当たりの電気伝導度の増加(抵抗の低下)
これらの効果によりDSSCの変換効率の増加が見込まれます.
テクスチャ基板のDSSCへの応用
実際にテクスチャ基板を用いてDSSCを作製した結果,テクスチャ無(Flat)と比べて変換効率が向上しました.今後は色素の色に合わせたテクスチャ形状の探索を行っています.