5G,6Gの超高速通信に使用される各種フィルター素子には,異なる特性を持つ基板を常温で接合する表面活性化接合が使用されています.この表面活性接合には,超精密に平坦化された基板表面を清浄化し活性化するために,高速のAr原子を照射する高速電子ビームが不可欠です.本研究では従来の高速電子ビーム(FAB:Fast Atom Beam )源に比べ,より長寿命で高効率なビーム照射を可能する新形FAB源を企業,他専攻との共同研究で行っています.
表面活性化接合とFAB源
表面活性化接合では,下図のようにウエハ表面の酸化層やOH基などをArの高速原子ビームにより除去し,表面を活性化させることで,常温かつ低圧力で接合する技術です.これにより線膨張係数の異なる材料を高精度に接合することが可能となり,5G,6Gに不可欠なSAWフィルタ用基板や,電気自動車などに不可欠なパワーデバイス基板を複合ウエハとして高性能化することができます.
新形FAB源の原理
本研究グループで開発した新形FAB源は,従来,ビーム射出面に水平に配置された2本の陽極を垂直に配置し,さらにFAB源内に交互方向の磁場を印可することでFAB源内のアルゴンイオンをビーム射出口に効率的に誘導しました.これにより,従来のFAB源で問題となっていたArイオンによる内部のスパッタリングとそれによるカーボン粒子の排出によるウエハ表面の汚染を低減し,より長寿命で高効率なFAB源を実現しました.
2020年モデル
名古屋大学電気工学専攻 大野研究室の協力を得て,プラズマのシミュレーションにより,より効率的なプラズマ生成とFAB照射を実現し,より小形化に成功しました.
2017年モデル
新形FAB源の原理確認と,より高効率な磁場配置を実験的に解明しました.